第49章 好きだよ
夢を見た。
いつもとは違う、温かくてほっとする…そんな夢。
そっとまぶたをあげてみると幸せな夢だったはずなのに自分がどんな夢を見ていたのか良くわからずにもどかしい気持ちになったが、悪夢じゃないとわかっただけいつもよりかは目覚めのいい朝ではあった。
だけど、寝起き早々に私は顔が青ざめた。
隣に、美形が、眠っている。
顔、近い。
無理、眩しい。
寝顔が美しすぎて眩しい。
そして、なぜか手を握られている。
何これ、なにこれ、ナニコレ!?
空いている片手で布団を持ち上げなかを覗くと服は着ている…つまりは…
「致して、ない」
よかっっった!
また過ちを侵して一人の刀剣男士を汚してしまったのかと…。
「……寝るときまで眼帯してるんだ」
そーっと彼の頬を人差し指でツンツンしてみた。
もちもちしてる。
どうやらぐっすり眠っているようだし起こさない方が良さそうだ。
それにしても……媚薬かわからないものを飲むこととなるとは…。
寝起きで致してしまったのかと慌てはしたが落ち着いてみると、昨夜の事はぼんやりとだが覚えていた。
何かあったなら忘れてしまいたいと鯉の泳ぐ水溜まりに頭から突っ込んでいただろうが、昨夜はそういうことは一切……うん、なにもなかった。
酔っ払いみたいな感じになっていたのでそこはまあ、恥ずかしいことではあるが燭台切さんにならそういう姿を見られてもまだ平気な方ではある。恥ずかしい気持ちはありますけど。
これが短刀の誰かだったり歌仙さんだったら……部屋から出ない。
子供の前で酔っ払って絡んだとありゃいち兄様に土下座しても足りないし歌仙さんだったら蔑みの目で見られそうだから心が折れそうだしで……考えるのやめよ!
「よし……とりあえず朝の日光でも浴びようかな」
手を離してからゆっくりと起き上がって立ち上がると襖の方に行き、音をたてないようにゆっくり開けると……パタン、と閉めた。