第47章 怒られた
「待っ、て……く、ださッ……うっ」
宗三「追いかけてきたんですか?」
「そ、りゃ……ッ……もちッ……ろ」
お代を払ってから宗三さんを追いかけて、何とか追い付くことができた頃には私は疲れきって息を切らしていた。
まさか置いていかれるとは……ひどい。
宗三「わざわざ追いかけて来なくとも、あの場にいつまでもいたらよかったのに」
優雅にふふっと笑う姿に美しいな、と思いながら置いていかれたことにはショックではあったが不思議と怒りとかはない。
宗三さんのやることにいちいち腹を立てていたらこの先やっていけないからね……うん。
出会ってからの嫌みったらしくも聞こえる言葉を聞かされ続けた私にとっては置いていかれるくらいなんてことはない。
ここは落ち着いて大人の対応をしなければ……
「ふぅ……宗三さんは私とは違って脚が長いので羨ましいです」
宗三「短足ですものねあなた」
「っ……こ、これでも結構スタイルはいい方なのですよ」
宗三「余計な脂肪が前に出てバランスがいいとは言えませんけどね」
「うっ……現世ではこういうのを好む殿方が結構おられるみたいですよ。視線を感じたことは何度かありましたし」
宗三「見られているなんて自意識過剰ですよ。あぁ、もしかしたら本当に見られていたのかもしれませんね。その無駄な脂肪を」
「し、脂肪って……そ、そりゃあ脂肪かもですがもっと言い方が……」
ど、どうしよう。
勝てる気がしない……ああ言えばこう言う……お口だけは達者なんてずるい。
いや、お口だけではないな……こんな美しい未亡人見たことないもの。
美しい人に毒を吐かれるのなら本望、なんて考える人はいるんだろうな……私にはそういう趣味はないし今後目覚める予定もないけど。