第33章 部屋
「ふぅ……なに言ってるの。そりゃあ乱ちゃんたちは私の刀じゃなかったかもしれない。けど今は私がみんなの主でみんなは私の仲間……家族だって思いたいのだけど……ダメかな」
乱「家族……?」
「私ね……家族の愛ってものがよくわからないの。だから審神者になるって決めたとき私にも家族ができるのかな、幸せになれるのかなって思って……まさか引き継ぐ形で審神者になるとは思ってなかったけど」
政府の人から、たいしたことを聞かされてはなかったが、審神者になって人生をやり直せばいい、自分の幸せを見つければいい、と何度も励まされ私は無事審神者になることができた。
説明としては最初にこれだと思えた刀を選んでそこから仲間を増やしていくって感じだったので、まさか既にたくさんいる刀達の審神者になるなんて思ってもなかったし心の準備もできてなかったが今となってはよかったと思っている。
「私はこれからもみんなのこと愛したいと思ってるし、できることなら家族になりたいって思ってるよ」
乱「……そっか。うん、やっぱりあるじさんはいい人だね」
「……悪い人に見えていたときもあったりしたの?」
乱「それはなかったんだけど……審神者は信用するなって薬研が言ってて……」
なるほど。
お兄ちゃんの言うことを聞いて私のことを信用するかどうかを考えてくれていたのだろう。
でも初対面のときはそんな感じしなかったんだけどな……。
「……自分の身を守るために警戒するのは大切なことだよ。私はみんなを大事にしたいと思っているけど、信用に値するかどうかは乱ちゃんの判断に任せるよ」
乱「ボクは信じるよ。あるじさんがボクたちを騙してるなんて考えられないもん」
「ありがとう……もし、私が……あなた方を不幸にするようなことがあれば……」
乱「あるじさん、その先は言っちゃだめ……期待しているからね。ボクたちを幸せにしてくれるって」
期待。
その言葉は私にとって呪いであり恐れるものでもあったはずなのに……乱ちゃんから言われるとそんなものを感じることなんてなかった。
期待、か。
かわいい子に期待されてしまったら応えてあげるしかないね。
今度は頑張ってみようかな。