第30章 仲直り
「あまり構いすぎも逆効果か……それじゃ伽羅ちゃん、またお話ししましょうね」
本当は趣味や好きな食べ物など質問したいところではあるが私を警戒している人にあれやこれやと聞いても答えてくれなさそうだし、これ以上構うと本気で嫌がられそう……。
伽羅ちゃんに手を振ると私は長谷部の部屋を探すため歩みを進めた。
鶴丸さんといろいろ回ったとはいえ……見た目が似たり寄ったりだと本当どの部屋か忘れてしまう。
とりあえず貼っておいた付箋もどこへやら。
「プレート作りとか短刀達が喜ぶかな……鯰尾もお兄ちゃんなんだし任せ……」
一瞬、短刀達が可愛らしい笑顔を浮かべてわいわいしているところに鯰尾が絵の具の筆を振り回して大惨事になっているところを想像してしまった。
さすがに鯰尾にも失礼か……
「短刀達は広い部屋でみんなで寝てるみたいだからプレートも一つか……あ、でも子供が親の似顔絵を書いてプレゼントするみたいに誰かのプレートをデコってプレゼントってやつもあるか……」
まあ、私が親の似顔絵なんて書いた日にはビリビリに破かれてくだらないことするな、と言われて終わりだろうけど。
…………思い出さないでおこう。
「あ、ここ……だ?」
考えながら歩いていると長谷部、と付箋に書かれたものが目に止まり首を傾げてしまう。
この風景というか……あっちにあの部屋があってこっちにあの部屋……あ、あれ。
なんか宗三さんと入った部屋の位置に似てるような……いや、ここだ。
私はすぐに理解した。
熱さでどうにかなりそうではあったがここが、この……長谷部の部屋らしき場所で私たちは…………二重の意味で入りづらい。