第26章 落ちました
「いったぁ……もう、なんで落とし穴なんて……いたずら、だよね」
私は落とし穴に落ちてしまったようだ。
アリスのように白兎を追いかけたら底の見えない穴に落っこちて……なんてことがなかったのはよかったが結構深い。
ここまで掘った誰かに拍手とビンタを一つプレゼントしたくもなったが、広い心で許すしかなさそうだ。
もしこれがショタなら……怒れないな。
「だ、誰かー」
こういうのにのぼるのは苦手なので誰かに助けてもらうしかないのだが、多分この近くを通る人は今はいないだろうな……。
まんばちゃんが近くにいたら……いや、いないかな。
どうしよう。
「誰かー」
運よく誰かが気づいてくれたらいいがそううまくはいかない、か。
落とし穴ではなかったけど体育館倉庫に閉じ込められたときのことを思い出すな……ドアを叩いても何度叫んでも夜まで誰も見つけてはくれなかった。
あのときはたまたま見回りに来てた先生が見つけてくれたからよかったがあのまま見つからなかったらと思うと少し怖い。
「……でも、今は状況が違うからね」
何度も叫べば誰かが気づくかもしれないし、助けてもらえるかも……嫌われてたら上から土が降ってくるか水を被せられるか。
そんな刀剣男士はいないと信じたいけど。
「……だ、誰かいませんかー」
疑うわけではないが万が一のためにも早くここから出ないと……
でも近くに人の気配は感じられない。
試しにのぼってみようとしたがどうやって、と手を伸ばすだけでなにもできずにいた。
本気で困ったかもしれない。
朝食がまだだからお腹すいたし……こんなことになるなら蛍丸達と一緒に行っとけばよかったな。
「……なんか、悲しくなってきた」
一人でこんなところにいるなんて、寂しいし……悲しい。
体育館倉庫の時はそういうことを感じなかったのに不思議だな。