第22章 近侍
「ん、ぁ…ふぁ…」
何十分とキスを続けられるとさすがに頭がぼーっとし始める。
本当に何もかも貪り尽くすような優しくも激しく熱い口づけに私は酔っていた。
やっとこそ唇を離されると大きく息を吸い込んだ。
危うく酸素不足になるかと思った……あまりにも夢中になりすぎたかな……。
いつの間にか膝の上に座らされていた私は長谷部のことを見た。
藤色の瞳……あの人と、同じだ。
「は、せべ……」
長谷部「主……」
「ひゃっ!み、耳元でッ……や、だ」
耳元で呼ばれると弱い。
長谷部は私の耳を唇で挟んだり舌を這わせたりして、まるで私の反応を楽しむように何度も耳元で名を呼ばれたりした。
それがくすぐったくて身を捩ったりしているとジャージのチャックが下ろされていくのがわかり私は咄嗟にジャージを掴んだ。
「は、はしぇべっ!」
長谷部「……いけませんか?」
何ヘラっと聞いてるんだ!
「お、お互い大丈夫になったしこれくらいで……」
いつの間にか、身体の熱も……うん、冷めているし……少しだけ。
お互いつらいからってことで何とかしようとしていたのだから大丈夫になったのならこれ以上、進むことはない……はずだ。
長谷部「……石切丸には許すのに、ですか」
「え……」
長谷部「俺が気づかないとでも?それにここに来たやつも言ってましたからね……」
ひやっとしたものを感じた。
これ、本当にやばいやつだ。
長谷部は怒っているわけでも軽蔑してるわけでもない……けど、チリチリと肌に感じる痛み。私に怒ってはいなくとも苛立ってはいる。
私が、間違ったことをした……から
「は、長谷部……」
長谷部「大丈夫ですよ主……俺に、任せてくだされば……」
深い闇を感じた。
この人は危ない、そう感じた私は長谷部の頬を叩いてすぐに離れ、振り返ることもせずにその場から逃げ出した。
苦い、でも甘いチョコレートのような……そんな感情だ。