第19章 穏やかな日
「ほら鶴丸さん、お口あけて」
鶴丸「……あ、あのなぁ……きみ、恥ずかしくないのか?」
「……恥ずかしいけど、まさか本当に白米とたくあんとお味噌汁だけ食べさせるわけにはいかないでしょ。ほら二人が作ってくれた煮物、食べよ?」
二人の昼食が運ばれてきたが、本当に私の分しか残っていなかったようだった。
お味噌汁と白米は残っていたが煮物が……ちょっと薄味だがそれもまたいい。
そして私は、こんなにも美味しい煮物を一人で食べるのはよろしくないと考え隣に座ってたくあんを頬張る鶴丸さんに私の煮物を差し出すことに。
もちろん、箸で口元に持っていって……
「ほーら、大根とか人参とか……あ、じゃがいももあるよ鶴丸さん」
鶴丸「こういうことをしていたら歌仙に怒られ……むぐっ!」
遠慮ばかりする口に大根を突っ込んでやる。
食べさせるだけなら私がやらずともご飯の上にちょこんと乗せたらいいだけなのだが……私がやってみたかったのだ。
恋人たちがよくやってる、あーんというものを。
「美味しい?」
鶴丸「ん、んん……あぁ、うまい。こっちもお返しだ!」
「むぐっ!……んー…この漬け物、美味しい……」
二人で食べさせあいっこという憧れのひとつができて満足ではあるが、なんだか笑えてきてクスッと笑うと鶴丸さんもつられたように一緒に笑ってくれた。
おかしいことなんてないのに、とても嬉しくて楽しい。
こういうの……いいな。
燭台切「……怒らないの?」
歌仙「あんなに楽しそうに笑う彼女を怒るほど鬼ではないよ」
燭台切「そうだね……」
鶴丸「光坊、おかわり!」
「お母さんおかわり!」
燭台切「はいはい、ちょっと待っててね」
食事を終えたあとはなにしようかなと考えるだけで楽しいが、さすがにそろそろ仕事をしないとなと思うから、ちょっと心がモヤモヤする。
資材を入手しないと……手入れができなくなって、挙げ句には……やめよう、考えることをやめよう。