第18章 来訪者
「……あんたはん、この本丸のこと全くもって把握しとらんやろ?」
「この本丸を紹介してくれたのは嬉しかったですが、見取り図のひとつくらいくれたってバチは当たりませんよね」
そして私たちは……広間横の物置部屋の隣にいた。
広間の横に部屋があるなとは思っていたがまさか物置部屋なんて……
「見たところ……刀剣との仲はそこそこのようやね。あの警戒心の塊とも言える長谷部を懐柔するなんて俺の目には狂いはない才能やったね」
「長谷部は……私のこと信じようとしてくれてますが、まだ完璧に、ではないですよ。ああ見えて結構私に対する警戒を怠ってはいないようです」
知らない人が見たらなついていると見られるだろうが、まだ疑いの心が見え隠れしている。
信長の刀というのは何かの本で読んだことがあった。
良き主だったのかは本人に聞かないとわからないが……もし、良くない記憶を呼び起こすようなことがあれば私も嫌なので聞くに聞けない。
少なくとも前任の事は好いてなかったのは確実のようだが……。
「チューしてたのにー?チューして警戒してるっておかしない?」
「……あれは、よくわからないけど……それよりも何をしに来たんですか」
「なにをって……決まってるやろ。お前携帯……スマホ、なくしてんだろ……」
ひっくい声で怒ってますをアピールしてきているが、怒ってはいないだろう。
スマホは……どこにいったのか知らない。
どこかで元気にしてるかなってくらいの興味しかないのだが、連絡手段を無くしたことは結構な痛手なのかも。
「ちゃんと探しておきます。もしかして用ってそれだけですか?」
「いんや。ほれ着替えの服」
持ってきていたとするキャリーケースを渡してくれたが……てっきりこれから旅行でも行くのかと思っていたので驚きだ。
ずいぶんとファンシーなキャリーケースだ……。