第1章 始
清光が落ち着いてから出発すると、なかなか姿を現さない刀剣達に私は気になったことがあった。
「清光、つらいことを聞くようだけど、ここの前任はひどいことをしていたんだよね。もしかしてほとんどの刀はいないのかな?」
加州「そ、れは……短刀達は、ほとんどいないと思うよ。すぐ折られてたし……もしかしたらどこかに隠れているだけかもしれないけど」
小さく震えながらそのときのことを思い出しているのか清光の顔は真っ青になっていた。
まさか、前任の審神者は清光の目の前で刀を折っていたのだろうか……。
そうだとしたら、本当によく頑張ったなと褒めてあげたい。
「清光、もうそんなつらい思いをしなくてもいいからね。私がここに来たからには絶対に幸せにしてあげる……一度、どこかで休もっか」
加州「えっ、でも、結構休んで……」
「まあ、さっきからなかなか進まないけど今のところ傷一つないとはいえココの傷が癒えてないし、さっきまで重傷だったんだもん。本当ならお部屋で休んでてほしいんだから」
清光の胸元を指差すと、見た目は綺麗になっても心は前任とのつらい記憶などでいっぱいなはず。
心のケアも任されているので無理をさせるわけにはいかない。
前任の話も聞かない方がいいかな。
加州「俺は大丈夫だからっ……実はいつ折れてもおかしくない状態の刀がいて」
「どこに!?」
加州「あ、あっちの部屋」
私は清光の言葉にすぐさま反応すると走り出した。
いつ折れてもおかしくないなんて……本当にひどいことをしてくれる。
加州「主っ…部屋こっち!」
「どこもかしこも同じようなものでしょう!」
加州「無人の部屋に行っても仕方ないじゃん!」
……ごもっとも。