第5章 短刀
長谷部「…………」
「……乾パンと、サバ缶だね」
戻ってきた長谷部の手には乾パンとサバ缶があった。
まあ、そうだよね……ここでオムライスとか出てきた方がなんか怖いし。
それに非常食があるだけでもいいことだよ。
長谷部「ッ…あ、主……こんなものしか用意できなかった俺に罰を!」
「十分な食事だよ。乾パンは食べたことないけどお腹はふくれるって聞くし……ありがとう」
世の中の空腹を救ってくれるという乾パンをバカにしてはいけない。
これも生きるための立派な食料なんだ……非常食が出てくるほど荒んでいるんだな、この本丸……
「ごめんね。みんな掃除とか修理……修繕とかやってくれてるのに私がこんなんで………」
長谷部「主には感謝してますよ。ご自身の力をすべて使ってでもみなを救おうとしてくれているのですから……」
「……みんな、いい子達だよね。ここに来たとき、すっごい殺気とか感じてたのに誰一人として私に刀傷を負わせることはなかった……みんなら優しくていい子だよ」
長谷部「……っ……す、すいません目にゴミが……」
本当にみんな、優しくて温かくていい子達ばかりだ。
ただ、大事にされなかったから私を……人間というものを信用する心が薄れていただけ。
これからは私がみんなの心のケアをしていかないといけない……私なりにできることを頑張ろう。
あの人と約束したのだから。