第1章 rain of repose
燃えるように激しく抱かれた後、身体の熱は時間の経過とともに冷めてゆく。
けれどその熱がベッドシーツに移れば、結局感じる温度も変わらない。
「んん・・・」
深夜、何気なく目を開き、目覚めてしまったことを当然理解する。
名無しの背中には、少しだけ汗の感触があった。
「?」
暗い部屋、カーテンの隙間からは、ほんの少しの月明かり。
場の雰囲気を演出するようなものでは決してなかったが、広がる視界、眠気まなこに何も見えないという状態でもなかった。
今起きることにメリットなどどこにもない。
ゆえにすぐにまた眠ろうとしたのだけれど、そのとき、月明かりの中に人工的な明るさが混ざっていることに名無しは一人気付き、その光は彼女の目をじわじわと襲った。
絵に描いたように眩しがると、名無しは脳裏にふわりと疑問符を浮かべる。
が、その正体は、頭を起こせばすぐに分かった。
「・・・ナッシュ・・?」
数分経って、自分が起きてしまった理由をまず少し考える。
眠いながらも、名無しはふと、隣で眠るナッシュがうつ伏せになって寝んでいたことが気になった。
身体を覆うシーツに暑苦しさを感じただけで目を覚ましてしまったこと・・・何となく、自分の起床に対し、それだけを理由にはしたくなかったというのもあったのだ。
いつもは自身の枕になっていた、墨の彫られたナッシュの左腕。
今は、身体に沿って少しだけ開いた状態だ。
では右腕は・・・ナッシュが手に持っていたものが、名無しが眩しく感じた原因だった。