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【アカセカ】君とつながる物語※R-18

第1章 【雑賀孫市】雑賀の郷の夏祭り



戦の国。
雑賀の郷。


新緑の季節からお世話になっている、この雑賀衆の郷にもだいぶ慣れてきた頃。


昨日、孫市から
「明日の昼過ぎから屋敷で話合いをするから千草も来てくれないか」
と言われていたため、千草は孫市の屋敷を訪れていた。


「よく来たな、千草。こっちに座りな」

通された部屋には孫市の他にも何人かの部下、それから郷の女性も数人いた。

千草は言われるがまま孫市の隣に腰掛ける。


「今日は何の話し合いですか?」

「ん?……あぁ、今日はな、夏祭りの打ち合わせだ」

「えっ?!」


雑賀衆の話合い、と聞いただけですっかり戦に関わることかと思っていた千草はやや拍子抜けした。


(なんだ……戦いのことかと思ってちょっと緊張しちゃった…)


「ん?どうした?」

「あ、いえ……夏祭りって毎年やってるんですか?」

「まぁな。太陽が登らなくてイマイチ締まりが悪いが、やらないともっと締まらねぇだろ?」

「頭領は酒を飲む口実が欲しいだけですよねー」

若い衆の一人が声を上げるとどっと笑いが起きる。

「おいおい…俺は口実がなくとも毎晩飲んでるぞ?」
「ちげぇねぇ!」


立場や年齢問わず、和気あいあいとしている雑賀衆の人たちの雰囲気が千草は大好きだ。

それも、孫市が分け隔てなく皆と付きあい、郷の皆全員を優しく思いやっているからであろう。


(こんなに居心地がいいのは、孫市さんの人柄のおかげなんだな…)

千草がしみじみ思いながら談笑する皆を見ていると

「どうした、千草…?へらへらして……」

「へ、へらへらはしてないですよ…!」


顔を赤くして慌てる千草の頭を孫市がぽん、と撫でる。


「さ、今年の夏祭りはどうするか、みんな意見を出し合ってくれ」


孫市の声で、夏祭りの話し合いが始まった。






日が沈みかけた頃、話し合いが終わり、
集まっていた者たちはそれぞれ家路についた。

「すっかり遅くなっちまったな。千草、夕飯はうちで食べていかないか?」

「えっ、いいんですか?」

「もちろんだ、すぐ用意させる。部屋で待ってな」


孫市さんの大きな手が千草の頭を優しく撫でた。


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