第20章 県大会二日目・確信
県大会二日目。先輩達はいつもと同じように見えるけど、やっぱり昨日までとどこか違う。ほんの少しだけ空気がピリッとしているような・・・
気持ちはわかる。だって、思い入れが強くなればなるほど、余計に力って入ってしまうものだから。
どうか今日も勝てますように。観客席から離れていくみんなの背中を見ながら、強くそう思う。
いよいよレースが始まる。岩鳶のレーンの隣は鮫柄学園。目をやれば、自然と宗介さんの姿が目に飛び込んでくる。昨日感じた不安がまたどっと心に押し寄せてくる。
・・・ダメだ。今はそんなこと考えてたら。
不安を振り払うように、いつもよりも大きな声を出し、声援を送る。
でも出だしで遅れをとってしまったからか、鮫柄との距離がなかなか縮まらない。
真琴先輩、渚先輩、と繋いでいって次はいよいよ怜先輩だ。飛び込み台の上に立つ怜先輩の隣には宗介さん。ダメだと思いながらも、目がそちらについいってしまう。
鮫柄が先にタッチして、宗介さんが飛び込む。怜先輩もほんの少し遅れて飛び込む。
怜先輩が頑張って追い上げている。だけど・・・宗介さん、それよりももっと速い、追いつかせない。
ごめんなさい、ごめんなさい、怜先輩。今は・・・今だけは宗介さんの泳ぎを見させて下さい。だって・・・もう目が離せない。宗介さんの力強い泳ぎから目が離せない。初めて宗介さんの泳ぎを見た時みたいに、呼吸も忘れてしまうぐらい・・・
・・・・・・なんだろう、今の。ゴールを間近にして、ほんの少しだけ宗介さんの泳ぎが変わった気がした。
・・・スピードが落ちた?多分、小さな小さな変化のはず。でも・・・・・・