第20章 県大会二日目・確信
いつの間にかレースは終わっていた。見ていなかったわけじゃない。でも心に生まれた不安が大きすぎて、そちらに捕われてしまっていた。
岩鳶は鮫柄に負けてしまったけれど、それでも2位だ。地方大会進出が決まった。
「やりましたね、皆さん!」
「でも2位だよぉ!」
「いいじゃないの、立派だったわよ」
「そうだ、地方大会進出、上出来じゃねえか」
着替えを終えて、遙先輩達が観客席に戻ってきた。私は会話に加わることができないで、さっきの宗介さんの泳ぎについて考えていた。
ふと視線を、プールを挟んだ向かい側の観客席にやる。そこには鮫柄学園の人達がいた。私達より一足早く撤収しようとしているところだった。
・・・どうしよう・・・どうしよう。江先輩達は何も言わない。きっと、気付いたのは私だけだ。いや、それも私の勘違いかもしれない。それでも・・・・・・
・・・行かなきゃ。このままじゃいられない。私、行かなきゃ。
「あの!江先輩!」
「何?ヒカリちゃん」
「わ、私、どうしても行かなきゃいけないところがあって・・・10分で戻ってきます。だから・・・その・・・」
「・・・うん、わかったよ。行っておいで」
私の態度はわかりやすいらしいから、きっと態度に出ちゃってる。宗介さんのことなんだろうなって、江先輩には思われてるだろう。それでも私は行かなきゃいけない。江先輩がにっこりわらって頷いてくれると、私は急いで観客席を後にした。
「あの!似鳥さん!」
「あれ、長島さんじゃないですか。どうかされたんですか?そんなに慌てて」
会場を出てすぐのところで似鳥さんを見つけて声をかけた。
「あの、宗介さんって今、どちらですか?」
「山崎先輩ですか?えっと・・・さっきあっちの方に歩いて行きましたけど・・・」
「ありがとうございます!失礼します!」
会場の裏手の方を似鳥さんが指差した。一体何だろうって思われてるだろう。でも今はそんなこと気にしてられない。お礼を言うと、似鳥さんが教えてくれた方に向かって私は走った。
少しの距離を走ると・・・・・・見つけた。鮫柄学園のジャージ。
こちらに背中を向けているけれど、見間違うはずなんてない。
・・・・・・宗介さんだ。