第19章 県大会一日目・不安
そして、怜先輩も見事に地方大会進出を決めた。
会場の裏手、芝生の上にビニールシートを敷いて、みんなで昼食をとる。
天方先生も笹部コーチもみんな機嫌がいい。
私だってもちろん嬉しい。遙先輩のフリーがまだ残っているけれど、遙先輩なら絶対に大丈夫、そう思うことができた。
だけど・・・さっき生まれた不安が消せない。
「さ、もうそろそろ片付けて観客席戻ろっか」
「あ、は、はい・・・・・・あ、あのっ!江先輩!」
勇気を出して私は江先輩に聞いてみることにした。
「ん?どうしたの?ヒカリちゃん」
「あ、あの、宗介さん・・・フリーにも出てないんですか?」
確か聞いたことがある。私が入部する前に、笹部コーチのスイミングクラブでスプラッシュフェスというのがあって、その時のリレーで宗介さんがフリーを泳いでたって。バッタが専門だけど、今回は何かの事情があってフリーに出るのかもしれない。
「えっと・・・うん、フリーにも出てないみたいだよ」
「え・・・」
思わず言葉を失ってしまった。どうして泳がないんだろう。泳げない事情があるんだろうか。
「あ、でも明日のメドレーリレーには出るみたいだよ」
「えっと・・・バッタで?」
「そう、バッタで」
少しだけ安心するけれど、まだ不安は消えない。リレーには出るけど、個人種目は出ない、なんて、そんなことあるんだろうか。
「・・・・・・」
「・・・さ、行こう。午後からもしっかり応援しなきゃね」
「は、はい!」
江先輩の手がそっと私の背中に触れる。少しの不安を残しながらも、私は立ち上がった。