第19章 県大会一日目・不安
みんなで観客席に行く。当たり前だけど、プールを一面に見渡すことができて、他の学校の人達もたくさんいて、これからいよいよ始まるんだ、そんな気持ちになってくる。
緊張しないように、そう思っていてもドキドキしてきてしまう。でも一番緊張しているのは、これから泳ぐ先輩達のはずだから、笑顔でみんなを送り出す。
渚先輩のブレ、真琴先輩のバック。
観客席から力いっぱい声援を送る。
水泳初心者の私には、先輩達の泳ぎはすごいなと思ってもそれが人と比べた時どうなのかは正直よくわかっていなかった。でも、二人とも堂々と予選を通過することができた。
「・・・や、やったーー!ご、江先輩!!」
「うん!やったね、ヒカリちゃん!」
江先輩と手を取り合って喜ぶ。渚先輩と真琴先輩の笑顔も、とても輝いていて嬉しくなった。
そして、次は怜先輩のバッタだ。怜先輩は凛さんと対決したかったみたいだけど、凛さんは次の組だ。ショックを受けたのか、怜先輩は『なぜだーーー!!』などと、大きな声で叫んでいた。
「山崎は?」
「それは・・・宗介くん、バッタが専門なんですけど、今回の試合には出てないみたいです」
遙先輩と江先輩の会話が耳に入ってきた。
・・・宗介さんが試合に出てない?・・・なんで、なんだろう。
・・・だって本当のことを言うと、宗介さんの泳ぎが見れるの少しだけ楽しみにしてた。宗介さんのことを見るのはつらい。でも・・・宗介さんの泳ぎは大好きで、また見たかったから。
・・・・・・違う、見ようとしなくても、自然と目がいってしまう、目が離せなくなってしまうんだ、宗介さんの泳ぎに。
・・・なんで泳がないんだろう。
「さ!ヒカリちゃん、また気合い入れて応援するよ!」
「は、はいっ!」
江先輩の言葉で我に返った。
・・・でも、ほんの少しだけ生まれた不安は消えなかった。