第18章 大丈夫
「よお!ハルと・・・ヒカリじゃねえか」
凛さんの声だった。
「凛。それと・・・山崎か」
「こ、こんにちは・・・」
遙先輩が発した言葉に、私はその場から動けなくなる。顔を上げることができず、俯いたまま挨拶する。
「おう、なんか珍しい組み合わせだな。俺らは買い出しに来たんだけど、お前らは?」
「俺達はサバイキングに行くんだ」
「サ、サバイキング?な、何だそれ・・・」
「世界中の鯖料理だけを集めた鯖好きによる鯖好きのためのバイキングだ」
「お、おお・・・よくわかんねえけど、お前がいつになくやる気なのだけはわかった・・・あ、そういやお前ら合宿の行き先、決まったのか?」
こんなやり取りを遙先輩と凛さんが繰り広げている間、私は恐る恐る一度だけ、顔を上げてみた。
私のすぐ前に遙先輩がいて、その向かいには凛さん。そしてその奥、少し離れた所に宗介さんが立っていた。
宗介さんは、凛さん達の会話には加わらないで、ずっとそっぽを向いていた。だけど、私が目を向けた時、私の視線に気付いたかのようにこちらを見た。瞬間、宗介さんと私の視線がぶつかる。
「!!」
「・・・!」
バッと目を逸らしてしまった。宗介さんがどうしたのかはわからない。でもきっと宗介さんも私から目を逸らしたに決まってる・・・
・・・どうしよう、まだ全然大丈夫じゃない。宗介さんの姿を一瞬見てしまっただけなのに、こんなにも苦しい。また涙が溢れそうになってくる。
「は、遙先輩!あの、早く行きませんか?」
「あ、ああ、そうだな。それじゃあな」
この場所から早く逃げ出したくて、遙先輩のカバンを引っ張ってしまった。
「おお、そんじゃな。食い過ぎて腹壊すんじゃねえぞ」
「わかってる」
「ヒカリも、じゃあな!」
「は、はい、失礼します!」
凛さんが挨拶してくれたので、私も凛さんを見て返す。一瞬だけどまた宗介さんが視界に入って、また私達の視線はぶつかった。
「っ・・・!!」
こんなの失礼だってわかってる。いくらフラれたからって挨拶もろくにしないで、目が合ったらすぐ逸らすなんて・・・でも無理だ。もう宗介さんの顔、まともに見ることなんてできない。