第17章 一晩明けて
どうやって家に帰ってきたのか記憶がない。それでも私は今、自分の部屋のベッドの上にいるから、なんとかして帰ってきたんだろう。
こんな時だけ両親が共働きでよかったと思う。だってきっとすごい顔をしてる。帰ってきてすぐに部屋に閉じこもるなんて、何があったのか心配されるに決まってる。
「・・・私、宗介さんにフラれちゃったんだ・・・」
はっきりとそう言葉に出すとまた悲しみが込み上げてきて、私はベッドに身を投げ出した。
「っ・・・うっ・・・・・・!」
涙が次から次に溢れてとまらない。好きだなんて言わなければよかった。言わなければ、今までの宗介さんと私でいれたのに。でももう戻れない。
「っ!・・・こんなのっ!!」
宗介さんの部屋からずっと手に握り閉めていたクッキーの袋を、ごみ箱に投げ捨てた。こんなもの渡さなければよかった。そうしたら宗介さんは苦手なものを無理矢理食べずにすんだ。
・・・私だって、宗介さんに想いを伝えないですんだのに。
「ふっ・・・うぅ・・・宗介・・・さんっ!・・・っ!」
・・・私、最低だ。宗介さんが具合悪いのに、私のせいで具合悪くなったのに、それでも嬉しかった。宗介さんがクッキー全部食べてくれてすごく嬉しかったんだ。『お前が頑張って作ってくれたのに捨てられるわけない』そう言ってくれた宗介さんの言葉が本当に嬉しかったんだ。
・・・なんで・・・なんであんなに優しいんだろう。
フラれたこともつらい。だけど、優しい宗介さんにつらそうな顔させたことの方がもっとつらい。『わりぃ』、そう言った宗介さんの顔、すごくつらそうだった。私があんな顔させてしまった。戻せるなら時間を戻したい。
つらい・・・悲しい・・・もうどうしていいかわからない。