第16章 わからない
ふと机の上を見ると、リボンだけが残っていた。俺はそれを手にとった。
・・・ただあいつを悲しませたくなかった。だから苦手なシナモンが入っていても全部食った。それだけなのに、結果としてあいつを一番最悪な方法で傷付けた。
ヒカリの気持ちに今まで気付いていなかったと言ったら嘘になる。はっきりとではない。多分どこかで気付いてたんだと思う。それなのにあいつに散々気を持たせるようなことをした。最悪だと思う。
でも・・・それでもあの時はヒカリといっしょにいたかった。あいつに触れたかったのもあいつの笑顔が見たかったのも嘘じゃない。
それでも・・・それでも俺は・・・あいつの気持ちに応えてやれない。あいつが俺を想ってるように、おんなじようになんて想ってやれない。
自分の気持ちがわからない。・・・肩のことがなければあいつに応えてやれたのか。それもわからない。
ただ・・・今は泳がなければいけない。いや・・・泳ぎたい。新しく生まれた俺の夢のために。何か見つけることができるのかなんてわからない。それでも俺は泳ぎたい・・・凛といっしょに。
俺の今の想いはそれだけだった。
それでいい。だからヒカリの気持ちには応えられない。それなのに、なぜこんなに心が痛む。あいつの泣き顔が焼き付いて離れない。
わかっているつもりなのに、自分の気持ちがわからない。
・・・ただひとつだけわかるのは・・・ヒカリはもう俺に笑いかけてはくれない、いちごみたいに赤くなった頬を見せてはくれない・・・それだけだった。