第15章 溢れる
「う、うそ・・・美味しいわけない!!・・・なんで・・・っ・・・大会前なのに・・・こんなに具合悪くなってまで・・・っ・・・」
「・・・」
なんで?なんで笑うの?なんで『うまかった』なんて言うの?大事な時なのに・・・寝込んでまで・・・なんで?
宗介さんはただ私をじっと見下ろしている。何を考えてるの?宗介さんの心がわからない・・・
「こ、こんなのっ!・・・こんなの、食えねえって!!・・・いちごが作ったのなんて、まずくて食えねえって!!捨てちゃえばよかったのに!!」
手の中の袋をぐしゃっと握りつぶした。
・・・わかってる。宗介さんはこんなこと言わない。優しいから絶対こんなこと言わない。それでも言わずにいられない。
「・・・・・・そんなことできるわけねえだろ?お前が頑張って作ってくれたんだから」
ふわりと大きな宗介さんの手が頭を撫でてくれた。その瞬間、ずっと抑えていた涙が溢れてきた。
「っ・・・っっ・・・なんで・・・っく・・・なんでなの・・・」
「・・・バカ、泣くな。お前を泣かせるために食ったんじゃねえんだから」
頬を伝う涙を宗介さんの手が拭ってくれた。触れる手がとてもあたたかい。
・・・ダメだ。溢れて溢れて止まらない。涙だけじゃない、宗介さんへの気持ちが溢れて止まらない。
「・・・・・・好き」
気付いたら宗介さんへの気持ちが言葉になって溢れていた。
「・・・私、宗介さんのことが好きです・・・・・・」