第15章 溢れる
凛さんに教えてもらった201号室まで急ぐ。
ドアの前まで着いてからひとつ大きく深呼吸。心を決めて少し強めにノックする。
「宗介さん!宗介さん!!あの、開けて下さい!!」
なかなか宗介さんは出てきてくれない。起き上がることもできないほど具合が悪いんだろうか。不安で仕方なくて、ノックをする力がどんどん強くなっていく。
「そ、宗介さん!大丈夫ですか?!」
何回かノックを繰り返すと、部屋の中で人が動く気配がして、ドアが開いた。
「・・・んだよ・・・誰だよ、うるせえな・・・ヒカリ?!」
「宗介さん・・・」
二日前に見た宗介さんの顔とはまるっきり違っていて、宗介さんはとても顔色が悪かった。
「・・・どうした、何でこんなとこまで来た」
「わ、私、江先輩から宗介さんが具合悪いって聞いて・・・そ、それで・・・」
「ああ・・・別にもう平気だ。問題ねえ・・・まあ、とりあえず中入れ」
「・・・し、失礼します」
宗介さんに部屋の中に入れてもらう。パタンと音を立ててドアが閉じた。ふと目をやると、ふたつある机の内のひとつに、空になったクッキーの袋とリボンが置いてあった。
「・・・ただの風邪だ。お前が心配するほどの事じゃねえ・・・ああ、そういやさっき電話出てやれなくて悪かったな」
「か、風邪なんて嘘言わないで下さい・・・!宗介さん・・・・・・これっ!・・・食べちゃったんでしょ?!」
足早にその机まで歩み寄ると、私は空の袋を掴んだ。
「・・・ああ、食った」
「な、なんで・・・っ!・・・なんで、シナモン、苦手なのに食べちゃったんですか?!!」
「・・・うまかったぞ、あれ」
宗介さんはそう言うと少し笑った。大好きな宗介さんの笑顔なのに、今はとても弱々しくて、ぎゅっと胸が苦しくなった。