第15章 溢れる
もどかしい、もどかしい。早く着いてほしい。焦る私を嘲笑うかのように電車はゆっくりとゆっくりと進む。
一度電車を待っている時に宗介さんに電話してみたけど、出なかった。どうしよう、電話に出られないほど具合が悪いんだろうか。
やっと鮫柄学園の最寄り駅に着いて、私は再び走り出す。息が上がって苦しくて仕方なかったけれど、宗介さんのところへ早く行かなきゃ、その一心で私は走り続けた。
「・・・はあっ・・・はあっ・・・!」
鮫柄のすぐ近くまで来て、少し呼吸を整えながら携帯を取り出す。凛さんに電話をかけ、寮に入れてほしいと伝える。凛さんはかなり驚いていたけど、とりあえず寮の前まで来いと言ってくれた。寮に向かってまた私は走る。
「・・・はあっ・・・あ、あの!凛さん!いきなりすいません!・・はあっ・・・」
「ヒカリ、お前どうしたんだよ。いきなり寮に入れてくれって・・・てか、走ってきたのか?大丈夫かよ、お前」
ずっと走り続けてきて、肩で息をしている私を凛さんが心配してくれる。だけど、今は私なんかより宗介さんだ。
「あ、あの!わ、私っ!宗介さんが具合悪いって聞いて・・・それで・・・っ!」
「ああ・・・でもあいつ苦手なシナモン入りのクッキー、やめろって言うのに構わず食ってたし・・・自業自得だろ。今日はだいぶよくなったけど、昨日なんて一日寝込んでたんだぜ」
・・・どうして?どうしてそんなに苦手なもの、食べちゃったの?なんで?宗介さん・・・
「で、でもあの・・・そ、そのクッキー・・・わ、私が・・・その・・・だから・・・」
まさかそのクッキーは私があげたものだなんて凛さんに言えない。何て言ったら伝わるんだろう。思わず俯いてスカートをぎゅっと握りしめてしまった。
「・・・わかった。宗介んとこ、行ってこい。許可はもらっといてやる」
ポンと頭に凛さんの手が置かれた。凛さんは何かを察してくれたのか、優しく微笑んでいた。
「・・・あ、ありがとうございますっ!」
「おう」