第15章 溢れる
「あの!江先輩!そ、宗介さんどうかしたんですか?」
江先輩のあの話し方、まるで宗介さんが具合が悪いみたいだった。一体どうしちゃったんだろう。
「えっと・・・なんかね、宗介くん、土曜日にシナモン入りのクッキー食べたせいで、具合悪いみたいなの」
「え・・・」
心臓が大きく音をたてた。
「宗介くん、昔からシナモン苦手なんだよね。気付かないで食べて寝込んじゃったことあったし」
「・・・」
「それなのになんで食べちゃったんだろう?・・・ヒカリちゃん?どうかした?」
シナモン入りのクッキーって・・・それって・・・私が宗介さんにあげたものだ。・・・なんで?なんで、そんな嫌いなもの食べちゃったの?その場に立ち止まって私は動けなくなってしまう。
「え?ヒカリちゃん、本当にどうしたの?」
「ヒカリ、どうかしたか?」
「どうしたの?具合悪くなっちゃった?」
「わかった!お腹すいちゃったんだぁ!」
「はぁ・・・渚くんじゃないんですから・・・大丈夫ですか?ヒカリさん」
江先輩だけじゃない、遙先輩達もみんな急に立ち止まった私を心配している。
「あの、皆さん!私、お先に失礼します!・・・江先輩!凛さんの携帯番号教えて下さい!!お願いします!!」
・・・私、行かなきゃ、宗介さんのところへ。いきなり頭を下げた私にみんなびっくりしてる。でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
「え?ホ、ホントにどうしちゃったの?お兄ちゃんの番号?」
「お願いします!何も聞かないで、教えてください!!」
「う、うん・・・わかった。これ・・・」
私の迫力に押されたのか、江先輩が凛さんの番号を教えてくれる。急いでその番号を登録する。
「ありがとうございます!!・・・それじゃあ私、失礼します!本当に皆さん、すいません!!」
何度も頭を下げると、呆気にとられている先輩達を置いて、私は駅に向かって走り出した。