第15章 溢れる
「真琴、ちょっといいか」
「あ、うん。何?ハル」
遙先輩が真琴先輩を呼んでくれて、心の底からホッとした。
「あ、そうそう。ご飯と言えば、今度ヒカリちゃんもいっしょにお弁当食べようね。いつも用事あるっていないよね?」
遙先輩の方に向かおうとした真琴先輩が、私を振り返って言う。そう、入部してからずっとずっと、自分がたくさん食べることを知られたくなくて、用事があると逃げてきたのだ。
でももう隠したりしたくない。だって、宗介さんがチビで女でたくさん食べてもひかないって言って、私に自信をつけてくれたから。
「は、はい!今度ぜひ、ごいっしょさせてください!」
「うん!楽しみにしてるね」
はっきりとそう答えると、真琴先輩はにっこり笑ってくれた。
『最初から隠すな、ばーか』とか宗介さんだったら言うのかな、なんて想像してちょっとおかしくなってしまう。宗介さんって、言葉は少ないし言ってることは乱暴に聞こえるけれど、その奥にすごく優しさがあるっていうか・・・こんな風に何度も何度も思い返しては大好きだなって思ってしまう。また宗介さんに会いたいな・・・
そんなことを考えていたら、江先輩の電話で話す声が耳に入ってきた。
「あ、お兄ちゃん?・・・うん・・・うん、こっちもみんな頑張ってるよ・・・・・・うん・・・」
よく凛さんと電話してるし、本当に仲がいいんだなあ、なんて微笑ましい気持ちになってくる。優しいお兄ちゃんがいていいなあなんて思っていたら、次に聞こえてきた言葉に私は固まった。
「え?宗介くんが?大丈夫なの?・・・うん・・・そうなんだ、お大事にって言っておいてね・・・それじゃあね」