第14章 苛立ち
御子柴が出て行った後で、俺は風呂に行った。
風呂の中で肩を回すと、また少しだけ違和感が増したような気がして気持ちがささくれ立った。
部屋に戻るとまだ凛は戻っていなくてホッとした。焦っているのを悟られたくなかった。
携帯を確認すると、ヒカリからの返事が来ていた。
『お風呂入ってて返事が遅くなりました。宗介さん、無事に着けてよかったです。今日はありがとうございました。おやすみなさい』
短いメールだったが、たったそれだけで少しだけ気持ちが和らいだ。ただ、それと同時に風呂あがりのヒカリの姿がなぜか浮かんで、ただでさえ俺も風呂を出たばかりで熱い身体がさらに熱くなった気がした。
「おー、宗介。風呂入ってきたのか」
「あ、ああ・・・」
勝手だとは思うが、この時は凛が帰ってきてくれてホッとした。凛と話していればくだらないことを考えなくてすむ。
少し会話をした後で、凛が練習メニューを考えるため机に向かう。
俺は隣の机で、ヒカリがくれたクッキーの袋を手に取った。俺にはよくわからないけど、御子柴が言ってたとおり、リボンが結んであったりして、ヒカリが色々考えてやってくれたことだけはわかった。御子柴がまたうるせえかもしれないし、早めに食っちまったほうがいいかもしれない。
リボンを解いて袋を開けると、忘れたくても忘れられない嫌な香りが鼻を突いた。
「・・・あれ?このにおい・・・宗介確か、シナモン苦手だったよな?」
凛の方にもにおいが届いたのか、こちらに顔を向けてきた。
「・・・いや、こいつはいいんだ」
「は?」
凛のきょとんとした顔を横目で見ながら、俺はヒカリの作ってくれたクッキーを手に取った。