第14章 苛立ち
机の上に、ヒカリから渡された袋とクッキーを置き、ヒカリにメールを送る。少し迷ったことは伏せて、無事に着いたとだけメールを送った。
「風呂、行くか・・・」
ヒカリから返してもらったやつを使おうかと、袋からタオルを取り出す。その瞬間、甘い香りがふわりと、俺の鼻をくすぐった。まるでこの前映画館でヒカリの髪から漂った香りみたいに。
「・・・甘ったりぃ・・・」
戸棚を開け、別のタオルを取り出し、代わりにそのタオルをしまう。なぜかはわからないが使う気になれなかった。
もう一度机に戻って携帯を確認して、ヒカリからの返事がないことに少し気持ちが動かされる自分に苛立つ。まだメールを送ってから5分もたってねえのに。それなのに、ヒカリならすぐにでも返事をよこしてくると思い込んでいた。
「・・・くっそ」
自分のくだらない感情に腹が立つ。さっきもそうだ。ヒカリの手を握ってた御子柴に苛立ったり、ヒカリが昔好きだった男に腹が立って仕方なかったり。
・・・・・・きっと妹みたいに感じてるんだと思う。ちょうど江に対してそう思ってるみたいに。ガキの頃はよく俺達にくっついて回ってたから江とはよく遊んでやってた。凛が江を大事にしてるみたいに、俺も本当の妹みたいに思ってる。ヒカリに対しても、きっとそんな感情なんだと思う。
・・・そういえば凛は江につきまとってる御子柴をかなり警戒してたから、きっと俺もそうだ。
一緒にいて飽きねえし、反応も面白いし、顔もまあ・・・可愛いっちゃ可愛いし。ちっせえのになんか頑張ってるとことか、泣いてたら側にいてやりてえと思ったこととか、なぜか無性に触れたくなって何度も頭を撫でてやったこととか、触れ合わせた手の平が熱くてあいつの瞳に吸い込まれそうになったこととか、あいつの照れてる顔とか、笑った顔とか・・・この胸に渦巻いてる感情も全部全部、きっと・・・そうだ。
・・・今はこんなこと考えてる余裕なんてねえのに。ヒカリのことがなぜか頭から離れない。そんな自分に腹が立つ。