第13章 帰りたくない
「そんじゃ、俺帰るわ」
「あの!宗介さん!だ、大丈夫ですか?道、迷いませんか?!」
自分でもすごくしつこいと思う。それでもまだ宗介さんと離れがたくて、また呼び止めてしまった。
「・・・2回目だし、大丈夫だ・・・多分」
「お、送って行きましょうか?」
「はぁ・・・そしたら俺が送ってきた意味がなくなるだろ」
「そ、そうですよね・・・」
宗介さんが大きくため息をつく。そうだよね、さすがにもうしつこいよね。早く帰らせろ、って思ってるんだろうな・・・もう引き止めたらダメだ。大会前なのに私のために時間を作ってくれて、家まで送ってくれて、公園までいっしょに行ってくれた。もうさよならしないと・・・でも、そう決意してもさみしい気持ちは消えなくて、思わず俯いてしまった。
「・・・無事に寮に着いたらメールする。それでいいか?」
「は、はいっ!・・・あ、あの・・・」
宗介さんの思ってもみない言葉にパッと顔を上げた。どうしよう、嬉しいのきっと顔に出ちゃってる。
「ん?」
「た、たまにでいいので・・・またメールとか、その・・・で、電話とかしてもいいですか?」
今日一番の勇気を振り絞って言った。もう暗くてよかった。絶対顔、真っ赤になってる。
・・・でもこうしないと、宗介さんとの接点がなくなってしまう。
「・・・」
「や、あ、あの、迷惑でしたら・・・」
「はっ・・・まあ、暇な時なら相手してやるよ」
「!・・・は、はい!」
じっと宗介さんが私を見下ろしてくる。こういう時の宗介さんは何を考えているのかわからなくて怖い。だけどすぐに笑って返してくれた。また軽く頭を撫でられて、嬉しさとドキドキでおかしくなってしまいそうだった。
「・・・そんじゃな、ヒカリ」
「はい!今日は色々とありがとうございました!」
宗介さんが背中を向けて歩き出す。せめて姿が見えなくなるまで宗介さんを見送りたくて私はその場に留まっていた。すると急に宗介さんが振り返った。
「・・・あ、言うの忘れてた」
「へ?な、何ですか?」
「お前、そういう格好も似合うな・・・そんじゃな」
・・・ずるい・・・ずるい、ずるい!!そんなこと、帰り際に言うなんて。
私のことをドキドキさせるだけさせておいて、宗介さんはさっさと歩いて行ってしまった。
・・・宗介さんのことが大好きで、大好きすぎて、きっと今夜も眠れない。
