第13章 帰りたくない
・・・気持ちいい・・・なんだかすごく大きくてあったかいものに守られているような・・・・・・
「・・・ヒカリ、おいヒカリ」
「へ?・・・あ、あれ・・・」
「もうすぐ着くぞ、起きろ」
「え?!え?!・・・わ!ま、待って下さい、宗介さん!」
宗介さんの声で私は目を覚ました。最初、自分がどういう状況だったのかまったくわからなかったけど、宗介さんが立ち上がってやっと頭がはっきりした。慌てて宗介さんの後を追って、電車を降りる。
「わ、私・・・寝ちゃってました・・・よね?」
「おう、よく寝てたぞ」
ホームを歩きながら宗介さんに恐る恐る聞いてみる。
どうしよう。恥ずかしくて仕方ない。美味しいものをたくさん食べてお腹がいっぱいになって眠ってしまったなんて。子供みたいだって思われたんだろうか。
昨日からずっと緊張したり気を張りっぱなしで、つい気が緩んでしまったのもあったかもしれない。
「あ、あの・・・もしかして寝言、とか言ったりは・・・」
どうしよう、寝言でおかしなことを言ってしまっていたら。『宗介さん好き』とか、そんなことをもし言っていたら・・・
心配する私をよそに、宗介さんはにやりと少しいじわるそうな笑みを浮かべる。
「ああ、寝言言ってたし、いびきもかいてたし、おまけに涎までたらしてたな」
「えぇぇぇっ?!!う、うそ・・・」
「はっ・・・嘘だ」
「も、もう・・・ホントいじわるなんだから・・・」
・・・こんな嘘つくなんて、宗介さんって本当にいじわるだと思う。ほんの一瞬だけど、もう消えてしまいたいぐらい絶望的な気持ちになってしまった。
でも嘘だとわかって少しホッとした。
宗介さんに寝顔を見られちゃったのはすごく恥ずかしいけど・・・
少し暗くなってきた道を宗介さんと並んで歩く。
「・・・お前んとこ、家族みんなよく食うのか?」
「はい、お父さんとお母さんもとってもよく食べますよ」
「・・・マジか」
「二人とも私と同じで小さいですけど、私よりよく食べます」
「・・・すげえな長島家。いっぺん、食事風景見てみたいわ」
「あはは!」
この前は全然話せなくてどうしようと焦っていたけれど、今日は宗介さんとお話できるのがとても楽しくて。まだ家につかないで、家がもっと遠くなっちゃえばいいのに、そんなことを願いながら私は歩いた。