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いちご☆恋模様

第12章 やすらぎの時間


大会前だし早く帰って休めというヒカリをどうにか説き伏せて、俺はヒカリを送って行くため、電車に乗った。6月なだけあって、まだ外は少し明るかったが、ヒカリの家の近くは人通りもないし一人で帰らせるには不安があった。
やって来た電車に乗り込む。この前と少し時間がずれていることもあってか、車内はそこまで混んでおらず、座ることができた。

「よかったな、今日は混んでなくて」
「・・・はい・・・」

小さくヒカリが答える。なぜかわからないが、電車を待っている時ぐらいからヒカリは口数が少なくなっていた。今も俺の隣に座ったと思ったら、すぐに俯いてしまった。

「・・・」
「・・・」

沈黙が続く。俺もあまり口数が多い方じゃないし、こんな時、御子柴みたいによく話す奴なら会話も続くのかと思う。
・・・いや、なんで俺はヒカリの言動のひとつひとつに振り回されてんだ。別に話さなきゃ話さないでいいのに。

「・・・」

反対側の窓に映る自分とヒカリの姿を眺める。俺の身体よりもずっとずっと小さいヒカリの身体。肩幅も全然ねえし、腕だって強く掴んだら折れちまいそうなのに・・・それなのにこいつ、さっき俺より食ったんだよな・・・そう考えると面白くて仕方ない。怒るとピーピーうるさいところも、俺の言葉にすぐ赤くなるところも見てて飽きない。無駄に意地を張ったと思ったら、今度はガキみたいに泣いたり、そうかと思えば笑うと・・・

「!・・・ヒカリ?」

急に腕に重みを感じたと思ったら、ヒカリが俺にもたれかかってきていた。

「・・・すぅ・・・すぅ・・・」

ヒカリは気持ちよさそうに、小さな寝息をたてていた。

「・・・」
「・・・まだ・・・食べられます・・・すぅ・・・」
「・・・はっ」

ヒカリの寝言に思わず笑ってしまった。普通は『もう食えねえ』だろうが。それに、たくさん食ったら眠くなるって・・・

「ばーか、ガキかよ」

ヒカリと反対側の手で頭を撫でてやると、眠っているヒカリが気持ちよさそうな顔をして少し笑った気がした。
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