第12章 やすらぎの時間
「そんな奴ら無視して今みてえに食えばよかったのに」
「い、いえ、それは無理ですよ・・・それに・・・」
ポッとなぜかヒカリの頬が染まった。
「そ、その時いいなって思ってた男の子に、『お前、チビで女なのに食い過ぎだろ、気持ち悪い』って言われちゃったんです・・・」
当時を思い出したのか、ヒカリの目が少しだけ潤んだ。
・・・わからねえ。なぜかわからねえが、ものすごくムッとした。
「・・・なんでそんな奴の言うこと気にしてんだ」
「い、今思えばそうなんですけど、あの時は・・・す、好きだったから・・・」
ヒカリの赤く染まった頬はまるでいちごみたいで、それは今まで俺をいい気分にさせてきたはずなのに、なぜかこの時だけは腹がたって仕方なかった。
「・・・おい、お前まだ食えんだろ。他の店行くぞ」
「へ?ど、どうしちゃったんですか、宗介さん」
「甘いもんは別腹っていうだろ。行くぞ」
「ひゃ!あ、あ、あの、そ、宗介さん・・・ちょ、ちょっと!」
俺は立ち上がると、ヒカリの手を取り、そのまま店の外に出た。
なぜここまで腹が立つのか、自分でもよくわからなかった。