第12章 やすらぎの時間
「まあな・・・てことは認めるのか?」
「いえ・・・えっと・・・」
ここまで言ってやったのにまだヒカリは逃げようとする。
・・・もう5分以上経っちまったのに。時間がねえ。食わねえと一人3000円だ。
「・・・別にいいだろ、俺しかいねえんだし。何いいかっこしようとしてんだお前・・・・・・俺の前で散々泣いたくせに」
この前のことを持ち出すのは卑怯かと思ったが、仕方がない。あんだけガキみたいに泣いといて今更隠し事をしようとするヒカリになんだか腹がたったのも事実だった。
「う・・・も、もう・・・そ、そうですよ・・・私、実はすっごい大食いなんですよ・・・あの時もオムライス大盛り食べたかったし、あの大きいバッグの中にも大きいお弁当箱が入ってました・・・」
「やっと認めたか。で、なんでそんな隠そうとすんだ」
「ふ、普通隠しますよ!・・・い、一応女の子だし・・・」
「はっ・・・一応、な」
「そこ、笑うとこじゃないですよ!」
俺が笑うとヒカリが頬を赤くして怒った。
・・・こいつがこんな風に怒ったりしてるほうがなんだかホッとするなんて、俺は少しどこかおかしいのかもしれない。
「別にいいだろ。食わねえよりは食ったほうが。少なくとも俺は、全然食わねえ奴よりは、うまいって言いながらたくさん食ってる奴のほうが好きだ」
「す・・・・・・」
・・・す?そう言ったまま、ヒカリの頬だけでなく顔全体が真っ赤になっていく。いきなり熱でも出たかと思ったが、次の瞬間、ヒカリの腹から『ぐ〜!』という豪快な音が鳴った。
「わっ!・・・あう・・・す、すいません・・・」
「ははっ!・・・腹へっちまったな。もう時間ねえし全力で食えよ、ヒカリ」
「・・・はいっ!」
赤い顔をしたままヒカリが笑う。俺も笑い返すと、スプーンを手に取った。