第12章 やすらぎの時間
「・・・食え」
「え・・・いえ、あの、宗介さん・・・」
「早く食わねえと時間なくなるぞ」
「いえ、だから・・・」
ここは鮫柄学園から少し離れたカレー屋。俺の正面にはヒカリ。そして、俺達の目の前にはそれぞれバカでかい超大盛りカツカレーの皿。
「なんだ」
「あの・・・わ、私こんなに食べられませんよ・・・」
ヒカリはこの店に連れてきた時からなんだか態度がおかしい。
俺はこの店の『超大盛りカツカレー!30分以内に食べたら無料!!』という張り紙を見た時から挑戦してみたいと思っていた。この前凛を誘ったら、カロリーオーバーとか栄養がかたよるとか言って断られたから、ヒカリを誘ったのに、ヒカリはさっきからグダグダと言って食おうとしない。
「食えるだろ、お前なら」
「や・・・ふ、普通の女の子はこんなの食べられませんって・・・あはは・・・」
・・・グダグダうるさい上に嘘くせえ。俺は大きく息を吐くとヒカリの目を見て続けた。
「・・・お前、そんな成りだけど実は相当食うだろ」
「そ、そんなわけないじゃないですか・・・」
ヒカリの目が泳いでいる。こいつ、嘘つくの下手だな。
「この前凛達とオムライス食ったろ。そん時お前、なんか俺達の方羨ましそうに見てたんだよな。もっと食いてえ、みてえな顔して。食い方も妙にちまちましてるっつーか、わざとらしいっつーか」
ヒカリは呆気にとられて俺の話を聞いている。俺はさらに続けた。
「そんでよ、あん時お前、なんかでかいバッグ忘れてたろ。あれ・・・弁当箱だろ。弁当って振ると箸の音、するよな。それですぐわかった」
「・・・すごい」
「ん?」
「よく・・・見てるんですね。色々」
ヒカリの表情がさっきまでと変わった。これはほぼ認めたようなものだ。