第10章 涙と笑顔
「・・・落ち着いたか?」
「・・・はい・・・っく・・・すいません、なんか・・・迷惑かけて・・・」
「別にいいって言ってんだろ」
しばらくの間、泣きじゃくるとようやくヒカリも落ち着いてきたようだった。目は真っ赤だし、まだたまにしゃくり上げたりもするが、普通に話せるようになってきた。
「・・・まあとりあえず、そこから出ろ・・・ほら・・・」
「あ、ありがとうございます・・・」
俺が手を差し出すと、ヒカリは素直に俺の手を取った。そういえば初めて会った時は、自分で立てるって言って拒まれたんだっけな、などと思いながら、俺の手にすっぽり収まるヒカリの手を握り、立たせてやった。
「そこ・・・座っとけ」
「はい・・・」
ヒカリをベンチに座らせ、自分のロッカーを開ける。スポーツドリンクを手に取ると、ヒカリに渡してやる。そしてヒカリの隣に腰掛けた。
「これ、まだ口つけてないからやる。飲んどけ」
「・・・ありがとうございます・・・・・・」
礼を言ってヒカリがペットボトルに口をつける。こんなに素直に言うことを聞くヒカリには、正直調子が狂う。
「・・・で、何があった?言いたくねえならいいけど、誰かに聞いてもらいてえなら聞いてやる」
「・・・あ・・・えっと・・・私・・・・・・」
ぽつりぽつりとヒカリは話し出した。
まとめると、どうやら今日のために江達に任された大事なデータを学校に置いてきてしまったらしい。自分が浮かれてたのが悪い、とかヒカリは言ってたが、正直それは何のことかよくわからなかった。
「・・・まあ、やっちまったもんはしょうがねえだろ。今更どうこうできることじゃねえし」
「そ、それはそうですけど・・・」
「岩鳶の奴らも別に怒っちゃいねえし、お前は江に連絡して、後から持ってきてもらうようにしたんだろ。それで十分じゃねえか」
「・・・そうなんですけど・・・でも・・・」
ヒカリは俯くと、膝の上で固く握りしめた拳をじっと見つめた。