第9章 はずむ心
「い、いえ!そ、そんなことはない!です!」
ダメだ、声が上擦ってしまってる。隠し切れない。
「えっと、確か来週の水曜でしたよね?真琴先輩」
「鮫柄と?うん、確かそうやって凛が言ってたよ」
江先輩が真琴先輩と確認をとっている。本当に本当のことみたい。
来週の水曜日・・・宗介さんに会えるんだ・・・
「そうですか・・・そう、ですか・・・」
「あはは、ヒカリちゃん、なんかすごく嬉しそうだね」
「い、いえ・・・」
真琴先輩にまで言われてしまった。どうしよう、そんなにもわかりやすいんだろうか。
「この前は鮫柄行きたくないって言ってたのに、なんかあった?」
「あ、いえ・・・そ、その・・・よかったなって・・・とてもいい練習になるし・・・あの・・・その・・・」
真琴先輩は私と話す時、よく腰を屈めて顔を覗きこむようにして話してくれる。なんでも双子の弟さん妹さんと話す時の癖で、小さい子と話す時はこうなってしまうとか。真琴先輩の優しさはとても素敵だけど、少しだけ切ない・・・
真琴先輩のまっすぐな瞳に覗きこまれて、余計しどろもどろになってしまう。ちょっともうこの話題から逃げたい。
「うん、そうだね。いい練習になるから頑張ろうね」
私の気持ちが伝わったのか、真琴先輩はまるで天使のようににっこりと微笑むと、この話題を綺麗にまとめてくれた。・・・よかった。私はホッと息をついた。