第9章 はずむ心
「あ、そうそう。それでね、その時、ヒカリちゃんにお願いがあるんだ」
「は、はい、何でしょう?」
ホッとできたのもほんの少しだけで、江先輩の言葉に思わず身構えてしまう。
「その日私ね、委員会があって行くの少し遅くなっちゃうんだ。だから、これ・・・ヒカリちゃんが先に持って行ってくれる?」
そう言って、江先輩が差し出してきたのは、みんなのデータを細かくまとめてあるバインダーだった。いつも江先輩が管理してくれていて、これを元にみんなのフォームを見直したり、メニューを変更したり・・・と、とても大切なものだった。
「え、でも・・・そんな大事なもの・・・あの・・・真琴先輩が持って行ったほうがいいんじゃ・・・」
確かにそうだ。とても大事なものなんだから、私みたいな1年よりも、部長の真琴先輩が持って行ったほうがいいに決まっている。
「ううん、ヒカリちゃんももう立派なうちのマネージャーだからね。今回は任せるよ」
「・・・」
・・・言葉が出なくなってしまう。何も言えないでいると、怜先輩達も近くで話を聞いていたようで、私達のところへ集まってきた。
「責任重大ですね、ヒカリさん」
「忘れるなよ、ヒカリ」
「僕だったら絶対忘れちゃうから、マコちゃんに任せちゃう!ヒカリちゃんすごーい!」
「もう!みんなしてプレッシャー掛けちゃダメじゃないですか!・・・お願いできる?ヒカリちゃん」
最後に江先輩が私ににっこりと笑ってくれる。・・・そうか、私ももう岩鳶のちゃんとしたマネージャーなんだ。先輩達もみんな認めてくれてる。だったらちゃんと責任を果たせるように頑張ろう。
「はいっ!」
江先輩に負けないくらいにっこり笑うと、私は元気よく答えた。