第26章 『またな』

「宗介さん・・・」
「ん？」

まだ髪を撫でてくれている宗介さんをじっと見上げる。

「あの・・・・・・好きです」
「・・・・・・」

ピタッと宗介さんの手が止まった。

・・・やっぱり変だったのだろうか。でも私、次に告白する時は宗介さんの目を見て、って決めていた。さっきは宗介さんに抱きしめられながらだったから・・・だから今勇気をふりしぼって言ってみたんだけど、タイミング、とかおかしかったんだろうか。その証拠に宗介さんはさっきから固まってしまったように動かない。

・・・と思った次の瞬間には、私はまた宗介さんの腕の中にいた。

「んっ！・・・・・・あ、あの・・・宗介さん？」

ちょうど宗介さんの心臓の音が聞こえてくる位置に私の耳があたる。私の鼓動も速いけど、宗介さんの鼓動もおんなじぐらい速い。

「・・・お前・・・ほんっと・・・」
「へ？私がなんですか？」
「・・・いや、別に・・・・・・俺は・・・もう言わねえからな・・・」
「・・・ふふ、大丈夫ですよ。もう知ってますから」

私も腕を伸ばして、宗介さんの大きな背中に抱きついた。すると、宗介さんも、さっきより強く抱きしめ返してくれる。


「・・・・・・・・・・・・今日は帰さねえといけねえんだからな・・・くそ・・・」
「へ？何か言いました？」
「・・・なんでもねえよ」


とっても小さな声で宗介さんが何か言っている。聞き返すと、宗介さんはなぜか拗ねたような声で答えた。


そのまま少しの間抱き合う。体温とか、鼓動とか、全部確かめるみたいに。


「・・・・・・ヒカリ」
「は・・・い・・・・・・」


宗介さんがいつもより低いトーンで私の名前を呼ぶ。少し身体を離すと、宗介さんの瞳が私を見つめてくる。もうそれだけで宗介さんの気持ちがわかって、私はまた固く目を閉じた。顔、真っ赤になってるんだろうな、とか、またいちごみたいって思われてるのかな、とか、そんな余計なことは、宗介さんの唇が触れた瞬間に、全部どこかへ消えてしまっていた。


・・・さっき宗介さんが言っていた通りだった。




宗介さんからたくさんのキスが降りてきて、私は数える余裕なんてなくなってしまったのだった。