第25章 見つけられたもの
ずっと・・・ヒカリを拒んだ日、あの時に見たあいつの泣き顔が忘れられなかった。だけど、それと同時にヒカリの照れた顔や笑顔が何度も思い出された。もうそいつを見ることはできないんだと思うと、自分でも驚いてしまうぐらいに胸が痛んだ。必死に忘れようとした。こんなこと考えてる暇はねえんだ、って。
・・・でも俺からヒカリがずっと消えなかった。
街で会っても当然だが目を逸らされるし、もうあいつにとって俺はただ気まずいだけの存在だと思ってた。
だけど、ヒカリは凛しか気付かないような俺の泳ぎの異変に気付いた。そしてそれを俺にわざわざ伝えに来た。焦る気持ちと同時に・・・正直ほんの少しだけ、気付いてくれたことが嬉しかった。
多分、俺が自分の気持ちをやっと自覚したのは、あの雷の時だったと思う。
震えているヒカリの側にいてやりたいと思った。安心させてやりたいと思った。
こんな感情、他の女にだって抱くものじゃないか、などと前は思ったが、違った。俺はヒカリだから、側にいてやりたかった。
・・・いや、違う。ヒカリが泣いている時も、怒ってる時も笑ってる時も、その隣にいるのは俺でありたい、そう強く思った。他の奴じゃなくって、俺がヒカリの一番近くにいたい。
そこからは自分の気持ちをどう伝えるか、頭を悩ませる日々が続いた。もうすでに一度、俺はヒカリの気持ちを拒んでしまっている。それなのに、今更何を言うんだとか、諦めようとしたこともある。
だけどやっぱり・・・どうしてもヒカリに伝えたかった。他の奴にヒカリを渡したくなかった。
リレーを見ててくれと言ったのは、賭けだった。その時の俺にはもうそれしかなかったから。だから、すべてを賭けて泳ぐ俺の・・・俺達のリレーを見てもらえば、何かあいつの心に響くんじゃないかって。でもそれも、あいつの心がもう俺になければどうにもならないことだった。
・・・そしてヒカリはリレーを見ていてくれた。俺のところに来てくれた。俺を好きだと言ってくれた。
それだけでもう十分だった。
・・・きっと初めて会った時からずっと俺は惹かれてたんだと思う。ちっこくてうるさい、こいつに。
今日、俺はもうひとつ、かけえがえのない大切なものを見つけることができた。