第25章 見つけられたもの
「ま、ここらへんでいっか」
そこはリレーを泳ぐ前に、俺が凛と話をした場所の近くだった。ずっと握っていたヒカリの手を離し、すぐ側のベンチに座る。
「お前もここ、座れ」
「・・・は、はい」
素直に頷いて、ヒカリが俺のすぐ隣に腰掛けた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・さてと、どう切り出したもんか。話したいことはたくさんあるけれど、伝えたいことはひとつだけだ。
ヒカリが俺のところに来てくれた時点でもう腹は括ったつもりなのに、ここに来て尻込みしてる自分に気付く。情けねえと思う。
「・・・あ、あのっ!宗介さん!!」
歩いている間ずっと黙ったままだったヒカリが、ここに来て口を開いた。
「・・・私っ!見ました!リレー、ずっと・・・ずっと見てました!・・・っ・・・」
ひと粒、ふた粒とヒカリの瞳から涙がこぼれ落ちた。言葉は少なかったが、ただそれだけで十分に俺には伝わった。
「そっか・・・ありがとな」
「っん!・・・は・・・い・・・」
ヒカリの頬を伝う涙を手で拭ってやる。それでも涙は後から後から溢れてきた。
「凛にもずっと黙っててくれたよな。ありがとな」
「そ、んなのっ・・・っ・・・」
ブンブンとヒカリが首を横に振る。ずっとつらい思いをさせたと思う。それでもこいつは凛にも、誰にも言わずに黙っていてくれた。
「なあ、ヒカリ。ちょっと長くなると思うんだけど、俺の話、聞いてくれるか?」
「・・・はい」
やっと気持ちが固まってそう言うと、ヒカリは小さくだけど、はっきりと頷いた。