第3章 息もできないぐらいに
「あの、松岡先輩」
「ん?ああ、凛でいいぞ。なんだ?」
「え、えっと・・・凛さん。あの・・・や、山崎そ・・・先輩、は今日は?」
気にしているわけではないけど、やっぱり気になるので凛さんに聞いてみた。遙先輩達は、あまり山崎宗介とは親しくないみたいで、あまり気にしていなかったから聞けなかったのだ。
「ああ、あいつな。今日は遅れるか、もしかしたら来れねーかもって。前もそうだったんだよな、ったく・・・」
・・・そうなんだ。理由は凛さんもよくわからないみたいだけど、なんだか少しホッとした。
「江に少し聞いたんだけど、なんか宗介と揉めたんだって?」
「え?あ、いえいえ!そ、そんな揉めたというほどでは!!」
凛さんの言葉に慌ててブンブンと首を振る。まさか凛さんにまで話がいってしまっていたなんて・・・
「ったく・・・宗介も1年の女子相手に何やってんだよ・・・」
「い、いえ、大丈夫ですので。ホント、たいしたことじゃないので・・・」
私にとっては十分たいしたことだけど、凛さんまでまき込んでしまっては申し訳ない。
「そっか?ま、何か困ったことあったら言えよ。あいつ、ガキの頃からのダチだからさ」
「は、はい!ありがとうございます!」
この凛さんと山崎宗介が子供の頃からの友達、というのがますます信じられない。ちょっと凛さんを見習ってみたらどうだろうか。
「部長ー!!」
「おー、今行く!!・・・そんじゃな」
「あ、はい!」
鮫柄の部員に呼ばれて、凛さんは私の前を立ち去ろうとした。だけど、少ししてくるりと振り返ってニカッと笑う。
「・・・あ、江の奴な、妹ができたみたいで嬉しいって言ってたぜ。これからもあいつのこと頼むな、ヒカリ」
「は、はいっ!!!」
な、なんて爽やかな笑顔なんだろう。さらりと私の名前を呼んだけど全然イヤじゃない。
それに・・・その言葉が何より嬉しかった。
よーし、がんばろう!!