第24章 地方大会・リレー
しばらくして、次の泳者の怜先輩と宗介さんがスタート台の上に立つ。赤く腫れた宗介さんの肩が再び目に入る。
・・・宗介さん、宗介さん。ただもう祈ることしかできない。
周りもここに来てやっと宗介さんの肩に気付き、ざわざわし出す。だけど、私達にできることはただ見届けること、そして心からの声援を送ることしかできない。
わずかの差で渚先輩が先にタッチ。こちらも完璧な引き継ぎで怜先輩が飛び込む。そして、わずかに遅れて似鳥さんがタッチして、いよいよ宗介さんがプールに飛び込んでいった。
速い、速い。怜先輩との距離がどんどん縮まっていく。
・・・ほら、またそうだ。初めて宗介さんの泳ぎを見た時みたいに、不安も何もかも忘れて、目が離せなくなる、力強い泳ぎに。なんでこんなに惹かれるのかわからない。でもただ宗介さんが泳いでいるだけで、胸が熱くなって余計なことなんて何も考えられなくなってしまう。
どんどん怜先輩と宗介さんの差がついていく。怜先輩にも頑張って欲しい、でも宗介さんにだって頑張って欲しい。どっちも・・・どっちも頑張って欲しい。
いよいよターンに入る。先に宗介さんが、そして少し遅れて怜先輩が。このまま・・・このまま二人とも頑張って、そう願った時だった。ターン後、最初のストロークを開始しようとした宗介さんの身体が、急にプールに沈んだ。
「っ!宗介さんっ!!」
・・・どうしよう、どうしたらいい。このままだと宗介さんの、宗介さん達のリレーが終わっちゃう。ここから私の声なんて水の中まで届くんだろうか。ううん、届くか届かないかじゃない。言わなきゃ。だけど、そう思った私の耳に、いや、会場中を揺るがす凛さんの声が響き渡った。
「そおすけええええええ!!!!!」
・・・その声が届いたのか、動きを止めていた宗介さんは再び力強く泳ぎ始めた。いや、さっきよりも力強く何者も寄せ付けない泳ぎで、開いてしまった怜先輩との距離を縮めていく。
「っ・・・宗介さん!!宗介さん!!!頑張って!!!」
岩鳶なのに、なんで鮫柄の応援してるんだとか、そんな考えはもうどこかへ吹っ飛んでしまっていて、私はただひたすら宗介さんの名前を呼び続けた。