第22章 地方大会前夜・決意
「あはは!気にしない気にしない!そうそう!怜ちゃんはヒカリちゃんの話聞いて、一緒になって泣いちゃってたんだよね」
「えぇ?!そ、そうだったんですか?」
「い、いえ!ちょっと涙ぐんだだけですよ!渚くんは大げさなんですから・・・」
怜先輩は照れてそっぽを向いてしまったけれど、私は胸がいっぱいになった。あの話を聞かれてしまったことは、いまだにとても恥ずかしいけれど・・・改めて優しくて素敵な先輩達だなと思う。
「あ、あの・・・実はですね・・・」
私は、さっき宗介さんに会って、告白を忘れていない、そして明日のリレーを見ていてほしい、と言われたことを話した。
「えっと、そんな感じで・・・宗介さんは一体どんな考えがあって、あんなこと言ったのかわからなくって・・・」
きちんと言葉にして振り返ってみても、やっぱり宗介さんの気持ちがわからない。俯いて、握りしめた自分の拳をじっと見る。
「えっと・・・わからないも何も・・・恋愛心理学の理論から言って、その山崎さんの言動は・・・」
「怜ちゃん!」
怜先輩が何か言おうとしたのを渚先輩が遮った。
「それはヒカリちゃんが自分で気付かなきゃ・・・でしょ?」
「・・・そうでしたね」
先輩達はわかっているみたいなのに、どうして当事者の私がわからないんだろう。それに、私が自分で気付かなきゃいけないって・・・
「ヒカリちゃん」
「はい」
静かな空間に、渚先輩が私を呼ぶ声が響いた。私は渚先輩の方に向き直った。
「あのね・・・ちゃんと見ててあげればいいと思うよ、宗ちゃん達のリレー」
「渚先輩・・・」
「まだヒカリちゃんが宗ちゃんのこと想ってるならさ・・・宗ちゃんの気持ちに応えてあげればいいと思うよ」
「・・・」
いつもの明るい声とは違って、少しだけ低めの声。渚先輩の言葉のひとつひとつが私の心に響いてくる。
宗介さんの気持ちに応える・・・
私・・・最初は戸惑ったけど、宗介さんが私の告白を忘れたことはないって言ってくれて、やっぱり嬉しかった。だから・・・というわけじゃないけれど、私、宗介さんの気持ちに応えたい。今も・・・ずっと・・・宗介さんのことが大好きだから。