第22章 地方大会前夜・決意
今日はついに地方大会の前日。
私達岩鳶高校水泳部のメンバーは今、今晩宿泊予定のホテルに向かって歩いているところだった。
「ねえ、ヒカリちゃん!ヒカリちゃんの荷物おっきいねえ!何が入ってるの?」
「えっと・・・ホテルの食事が足りなかった時のために備えて一応、食料が・・・」
恥ずかしいけれど、渚先輩の質問に正直に答えた。大切な時にお腹が空いて力が出ない、なんてことになったら困るからだ。といっても、食欲不振の状態はまだ続いている。だから念のためだ。
「重くない?俺が持って行ってあげようか?」
「い、いえ!とんでもないです!一人で持てますので!」
真琴先輩の言葉に慌てて首を振った。明日大事な試合を控えてる先輩にそんなことをさせるなんて、とんでもない。
「ヒカリ、鯖缶は持ってきたか?」
「遙先輩、いくらヒカリさんでも鯖缶なんて持ってくるわけが・・・」
「あ、持ってきてます」
「持ってきてるんですか?!!」
「さすがヒカリだな」
遙先輩と怜先輩とのやり取りに思わず笑ってしまう。
「大丈夫だよ、ヒカリちゃん。今日の夜は天方先生が軍資金たっぷり出してくれるって言うから」
「そうよ!マネージャーだってたくさん食べて力を付けてもらわなきゃね」
こちらは江先輩と天方先生。こんな風に会話をしながらみんなで歩いて行った。明日本番、というのにみんなリラックスしているようだった。
少し歩いてホテルに着く。
「わあ・・・大きいホテルですね・・・」
見上げると首が痛くなってしまうほどに大きなホテルだった。明らかに高そうなホテルで、みんな泊まれるのだろうか、なんて心配もしたけれど、きちんとみんな泊まれるとのことで安心した。
ホテルの入り口を通って、ぞろぞろと受付までの距離を歩く。
「あ、江さーーーん!!」
すると、聞き覚えのある明るい声が聞こえてきた。振り向いて見ると、百太郎くんだった。鮫柄学園の人達がバスから降りて、私達と同じようにホテルに入ってきているところだった。
凛さんに似鳥さん。そして・・・当然、宗介さんもそこにいた。
その姿が目に入った瞬間、とっさに遙先輩の後ろに隠れてしまった。すごく情けない・・・とは思う。堂々としていればいいのに、自然に身体が動いてしまっていた。