第21章 小さなお願い
時間にして10分ぐらいだろうか。私にとっては永遠にも感じられる時間だった。やっと雷鳴が遠ざかっていった。それと同時に激しい雨音も嘘のように静かになった。
「・・・もう大丈夫そうだな」
「・・・」
そっと宗介さんの手が頭から離れた。顔を上げると、宗介さんが立ち上がって私を見下ろしていた。
「それじゃあ、俺、もう行くわ」
そう言うと、宗介さんはすぐに私に背を向けて歩き出し始めた。
まだ身体がうまく動かせない。それでも・・・言わなきゃ。少しよろめきながらもなんとか立ち上がって、もうだいぶ遠くにある宗介さんの背中に向かって、大きな声で呼びかけた。
「そ、宗介さんっ!!!」
「・・・」
宗介さんは私の方を振り向いてくれた。
ちゃんと言わないといけない。あんなに態度悪かったのに、せっかく宗介さんが何か話そうとしてくれたのに、私はすぐに逃げ出してしまった。それなのに宗介さんは震える私の側にずっといてくれた。優しい大きな手でずっと頭を撫でて安心させてくれた。そんな宗介さんにちゃんと・・・
「あ、ありがとうっ!!!」
精一杯の感謝の気持を込めて大きな声で言った。少しだけ声が裏返ってしまったかもしれない。それでもいい。私の気持ち、ちゃんと届いてほしい。
「・・・・・・おう」
微かにだけど、宗介さんが笑ってくれた。恐怖で冷えきっていた身体に一気に熱が巡る。
いつの間にか空には晴れ間が戻っていて、太陽が私達を照らしていた。