第21章 小さなお願い
「っ!・・・ひっ!・・・」
間隔が短い。近い。
・・・どうしよう、どうしよう。怖い、怖い。誰でもいい、誰でもいいから側にいてほしい・・・
だけど、こんな隙間に入り込んだ小さな私のことを見つけてくれる人はいない。
「ひっ!・・・も、もう、やだぁ・・・うぅ・・・」
涙がこぼれそうになったその時、私の耳に響く声があった。低く、それでいてとても優しい声。
「・・・ヒカリ?」
私の名前を呼んでくれるその声は、聞き間違えるはずもない、宗介さんのものだった。
「・・・お前、どうした。そんなところで」
・・・どうしてだろう。どうしていつも宗介さんは私のことを見つけてくれるんだろう。
「・・・」
「気分でも悪いのか?」
「ちが・・・っ!・・・ひゃっ!!」
宗介さんが私の前にしゃがんだのが気配でわかった。でも鳴り響く雷に、私は再び身体を縮こまらせてしまった。
「・・・雷、怖えのか?」
「ち、違いま・・・きゃああ!」
一際大きな雷鳴が辺りを揺らして、思わず悲鳴を上げてしまった。
「だ、だ、大丈夫・・・だから・・・ひっ!!・・・ほ、ほっといて・・・っっ!!」
全然大丈夫なように言えてないのはわかってる。でも怖くてどうしてもうまくしゃべることができない。
「・・・ほっとけねえだろ。大丈夫か?」
「・・・・・・」
・・・わかってる。こんなの身勝手だって。でも、でも・・・
「ヒカリ?」
「・・・そ、そう・・・すけ、さん・・・っ・・・!」
「・・・ああ」
「っ・・・そ、側にいてください・・・か、雷がおさまるまで・・・お願い・・・・・・」
小さな小さな声で言った。その間も雷は鳴り続けている。もしかしたら聞こえなかったかもしれない。
「ああ、わかった・・・ずっと、こうしててやる」
・・・でも宗介さんは私の小さな声をちゃんと聞いてくれてた。泣いてしまいそうなぐらいに懐かしい宗介さんの手が、私の頭に置かれた。ゆっくりと、優しい手が頭を撫でてくれる。
まだ雷は鳴り続けている。恐怖心は消えない。だけど頭を撫でてくれるあたたかくて大きな手が『大丈夫』、そう言ってくれてるみたいだった。