第21章 小さなお願い
「はぁっ・・・」
急いで会計を済ませて私は出口へと向かった。ドキドキと心臓が音を立てているのがわかる。
失礼なことをしたのはわかってる。でも・・・もう宗介さんと普通に会話なんてできない。
それでも、宗介さんに会えたことが嬉しくて頬が熱いのが悔しかった。
「・・・早く家に帰ろう」
買い物は全部終わったし、もうここにいる理由はない。何よりまた宗介さんに出会ってしまうことが怖かった。足早に自動ドアを通り抜ける。
「・・・あれ?」
お店の外の様子が、入ってきた時とまるで違うことに私は気付いた。さっきまでは痛いぐらいに太陽が照りつけていたのに、辺りはどんよりと暗くなっていた。
・・・心臓が早鐘を打ち始めた。
・・・大丈夫。落ち着いて。一雨来るのかもしれないけど、折りたたみ傘持ってるし・・・そうなるとは限らないし・・・
落ち着こうと思ってもバッグの中を探る手が震える。どうしよう、ここはもう一回お店の中に・・・
そう考えた瞬間に強い閃光が目に入ってきた。
「きゃっ!!」
身体が竦んで動けなくなる。休む間もなく、次の瞬間には地面を震わせるほどの轟音が響き渡る。
「っ!!ど、どうしよう、どうしよ・・・っっ!!!」
何も考えずに、すぐ近くにあったふたつの自動販売機の隙間に飛び込んだ。
大粒の雨が地面に叩きつけられている。屋根があるところだからとりあえず濡れることはない。だけど、雨に濡れた方がまだマシだったかもしれない。
一息つく間もなく、またピカっと空が光る。
「っっ・・・!!!」
身体を小さく小さくして、うずくまる。でも耳を塞いでも轟音を遮ることはできない。
「・・・ひゃっ・・・!!」
小さい時からずっと、私は雷が嫌いだ。
遅い時間まで親は帰って来なかったから、私は家で一人で待っていることが多かった。それ自体はそこまでさみしいと思ったことはない。でも・・・一人の時に雷が鳴ることだけが苦手だった。布団にくるまって何度、『お父さんお母さん、早く帰ってきて』と願ったかわからない。