第21章 小さなお願い
「・・・これか?」
ひょいと私のすぐ横から伸びてきた腕が、プロテインの袋を取り上げた。
「あ、す、すいませ・・・!!!」
一瞬、店員さんかと思った。でもすぐ違うとわかった。
・・・宗介さんだった。
「・・・ほら」
「あ、ありがとうございます・・・」
宗介さんが取ってくれたプロテインを受け取る。なんとなく台の上で奮闘してたのが恥ずかしくって、そっと台を降りて俯く。顔を上げることができない。
「・・・台に載っても届かねえとか・・・お前、ホントちっせえなあ」
「・・・」
顔を見なくても宗介さんの声だけで、宗介さんが少し笑ってるのがわかった。こんなこと言われたら腹が立つはずなのに、宗介さんに会えたこととか、宗介さんの声が前みたいに優しいこととかが嬉しくって、身体が熱くなっていくのがわかった。
「・・・・・・なあ、ヒカリ」
「・・・っ・・・あのっ!これ、ありがとうございました!失礼します!!」
宗介さんが何かを言おうとしたのがわかった。
・・・でも今更何を言うの?何を話せばいいの?
それに・・・どうしたって肩のことを聞きたくなってしまう。聞いたとしても、宗介さんは答えてなんてくれないだろう。きっと宗介さんにとって、一番触れられたくない部分なんだと思う。私なんかが踏み込めるはずがない。
私はお礼を言うと、逃げるように宗介さんに背を向けた。