第20章 県大会二日目・確信
「・・・・・・」
「・・・もう大丈夫だ。俺は行くから、お前ももう戻れ」
・・・言葉が出てこない。宗介さんはもう肩を押さえていないけれど、私にははっきりとわかってしまった。
宗介さんは肩を怪我していて、それを隠している。なぜなのかはわからない。
宗介さんの姿がどんどん遠ざかっていく。私は何も言うことができずに、ただその背中を見つめていた。
・・・どうしてなの?どうしてそんなに痛そうなのに、それを隠してまで泳いでいるの?
声に出して言えたらどんなにいいだろう。でも声に出せない。
「・・・宗介さん」
思わず口から出てしまったその名前。小さい声だった。聞こえるはずない。でも、宗介さんはぴたりと立ち止まると、少しだけ私を振り返って言った。
「・・・でっかい声出して悪かった」
その声色は、私が知っている優しい宗介さんのものだった。
宗介さんの姿が見えなくなっても、私はその場を動くことができなかった。