第2章 望むならプレゼントを
(俺様の妹に、俺様のチームメイトに、俺様の部活に!なんてことしてくれやがったんだ!)
許せない許せない、許せるわけがない。
監督の姪? 知ったことか! 部活の有害には変わりない! 処分すれば奴の目も覚めるだろうさ!
俺様のテニス部に、無能はいらねぇんだよ!
最初から気に食わなかったのだ。
媚びるような視線も匂いも雰囲気も。
存在そのものに生理的嫌悪を感じた。
これで有能ならまだ許せたが、ヘマしかしないわ仕事を増やすわ、無能というよりは有害因子だった。
仕方なく史佳が簡単な仕事だけを振るようになり惨状はマシにはなったが、信じられないことにあの女、自分がきちんと仕事をしていると思い込んでやがった。
さらに信じられないことに、氷帝学園の何割もの男があのクソ女に惚れやがった。
テニス部も例外ではない。
接触の少ない準レギュラーや平部員は無事だが、肝心の正レギュラーがほぼ全滅ときたもんだ。信じたくないことに。
余計な波風を立てるのも面倒だったので様子を見ていたら、どうやら理屈ではないのだと理解した。
そこには情緒も脈絡も関係ない。
あの女を好きになるのは、ある種の義務のようだった。
気に食わない女。気持ち悪い女。
そしてそれ以上に、気味の悪い女。
これ以上、テニス部に置いておいてやる気は、さらさらなかった。
「おい史佳、俺様の妹がメソメソメソメソいつまでも泣いてんじゃねぇよ」
「……ひっく」
「さっさと泣き止め。あのクソ女を俺のテニス部から摘まみ出す方法を考えるぞ」
「……え?」
「首洗って待ってろよ、そのうす汚ぇプライドズタズタにしてやるぜ」
無神経なクソ天狗が。どう料理してやろうか。
殺しゃしねぇよ。あんな奴の命を背負うなんざ真っ平ごめんだからな。