第7章 地獄行きの切符なら
「日吉、史佳を保健室に運んであげて。たぶん、軽い脳震盪だから大丈夫」
「分かりました」
日吉は滝の言葉に軽く頷くと、すぐさま史佳の傍らに膝をつき、ゆっくりと丁寧に抱え上げる。
そしてなるべく振動を与えないようにその場から離れた。
それを見届けた滝は、さてと、と莉香に向き直る。
「で、本性を曝け出してくれたわけだけど、何か言いたいことはある?」
「う…ぐ」
莉香は最後のあがきとばかりに食堂を見回すが、目に映る全ての生徒が自分に対して冷えた視線を送っていた。
やはり、先程まで莉香に傾倒していた滝が態度を変えたことが効いているのかもしれない。
「自分がやること、分かってるよね?まさかこのままここに居座るほど君は図太くないだろう?」
ここ、が指すのは、テニス部なのか、それとも氷帝学園のことなのか。
それは分からなかったが、莉香はぐしゃりと表情を歪ませると、すぐさま踵を返して食堂から走って出て行った。
さようなら、お姫様。
あなたの王子様はもう一人もいない。