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俺得設定女優主がBLを眺める話【気象系BL?】

第1章 彼女という女優について


 さておき、そんなこんな、始まった芸能活動だったが、それなりに充実していた。
 やけに綺麗な人、面白い人、才能ある人を見ることができたし、レッスンはおもしろかった。
 持ち前の器用さを発揮して、活動を始めて一年ほどで小さな映画の脇役なども経験した。大きな映画館では放映されないような、小さな会館とかで流される類の超マイナー映画だった。
 家族が揃って見に来てくれて、もうそれだけで十分な経験だった。そこで辞めてもいいなとすら思った。
 が、家族は止めなかったけれど、友達がもったいないとしきりに促すので、仕事は継続することにした。

 マイナーでコアなものだけだったが少しずつ映像の仕事が増えて、「おや?」と思い始めたのは高校の半ばほどだった。
 思ったより忙しくなったな、と高校に相談したのもそのころだ。「一応」はつくけれど名門で、毎年有名大学に数多くの生徒を合格させる進学校は、私のような生徒を想定してはいなかった。
 明らかに持て余されていたし、少し迷惑そうでもあった。すわ中退か転校かと思ったが、教員の多くは心ある人で、なおかつ私がそれまできちんとした成績を収め、友人にも恵まれ、問題のない高校生活を送っていたのが功を奏し、鬼のような課題で出席の代わりとしてもらえた。
 一部の教師や生徒にとやかく言われもしたが、大体は無関心で、あとは親切な友達や担任だったので、特に問題らしい問題は起こらなかった。

 そして、高校三年の後期。仕事も減らして、受験勉強に勤しみ、このままフェードアウトかなとすら思っていた私の人生を一変させたのは、ひとつのオーディションだった。

 記念受験だ、とマネージャーさんに言われていた。事実、私も周囲もまさか受かることはないだろうと思っていた。
 もうすぐ芸能界からいなくなる、さして珍しい存在でもない、ちょっと何本か小さな小さな映画に出た程度の高校生に、最後に今までで一番大きなオーディションを経験させてあげようという、思い出作りのはずだったのだ。

 なのに、受かってしまったのだ。なぜか。
 有名監督と有名女優、名のある脚本家が既に決定している、映画の脇役に決定してしまったのだ。

 私もマネージャーも放心して、周囲もそんな感じで、ただ、私にこの話を持ってきた事務所のちょっと偉い人だけが、楽しそうに笑っていた。
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